Brewtle Library 『洋書から辿る、紅茶の歴史』Vol. 2

Brewtle Library 『洋書から辿る、紅茶の歴史』Vol. 2

Vol.2 茶を、愉しむ時代。

茶は長いあいだ、
身体を整えるための飲み物でした。

眠気を払い、
集中力を高め、
心身を癒やす。

古代の人々にとって茶は、
薬草に近い存在だったのです。

けれど時代が進むにつれて、
人々は茶に、別の価値を見出し始めます。

それは、
「愉しむ」という価値でした。

中国・唐代(618–906年)。

この時代はしばしば、
「茶の黄金時代」と呼ばれています。

茶はもはや薬としてだけでなく、
愉しみのためにも飲まれるようになりました。

茶を淹れる所作は洗練され、
茶葉の摘み方や加工方法には
細かな決まりが設けられました。

茶葉に余計な香りが移らないよう、
摘み手の食事にまで細やかな配慮がなされていました。

一杯の茶のために、
多くの手間と美意識が注がれていたのでした。

そして、この時代に誕生したのが、
世界最古の茶の専門書『茶経』でした。

著したのは、陸羽。

茶の育て方、
加工、
道具、
淹れ方、
そして水についてまで。

一冊の本に、
茶の世界が記されました。

当時の茶は、
今の紅茶や緑茶とは少し異なります。

蒸した茶葉を固めた「餅茶」を焼き、
砕いて粉にし、
湯で煮出して飲んでいました。

塩や生姜、
オレンジピールやクローブを加えることもあり、
現代の感覚では驚くような飲み方も見られます。

やがて宋代になると、
茶はさらに繊細なものへと変わっていきます。

粉にした茶を湯で泡立てる飲み方は、
後の抹茶文化へと繋がっていきました。

香りもまた、
香辛料から花へ。

ジャスミンや蓮、
菊の香りが好まれるようになります。

茶は、ただ喉を潤すものではなく、

時間を愉しみ、
美しさを味わう文化へ。

私たちが今日、
静かにお茶を淹れる時間の中にも、

千年以上前の人々の美意識が、
そっと息づいているのかもしれません。

参考文献:
『THE TEA COMPANION』

 

 

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